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おわりに

つたないメルマガの文章ですが、ついに単行本にまとめることが出来ました。私個人にとっては、 悲願の刊行ですが、本当の喜びは、この本が形になったことではなく、この本の内容にあるような、 今でも信じられない不相応な住宅に住んでいるという事実かもしれません。

冷静に考えると、その最大の功労者は、どうも私自身ではなく、妻の佳子であることは間違い ありません。借地の情報を見つけてきたのも、資金を捻り出したのも、アパートを併合して、そ の後の住宅ローンの返済額が、ほとんどゼロに等しいというウルトラCを編み出したのも彼女で す。私は、言われるままに「はい、そうですか」と建築士としての技術を提供したに過ぎません。 小さな虫にも悲鳴をあげて飛び退く割には、大した度胸だと感心せざるを得ません。

ところで、自宅を建築する機会を得て、何が一番の収穫だったかといえば、まず施主の気持ち が分かったことです。設計者は、施主の考えを代弁できなくてはなりません。依頼されるままに、 ただ技術を提供するだけでは、本当の意味で委託を受けたことにはなりません。
言葉の裏に隠れた施主の思いを共有できて初めて、良い作品が生み出せるものと思います。

もう一つは、実際に決断して、実行して、その結果が自分自身で確認できたこと。本で得た知 識をそのまま鵜呑みにして図面化するのとは、大きな違いがあります。言い換えれば、自然の摂 理が身を以って体験できたこと。数々の失敗の要因を探ることで、今後の設計と施工に自信を持って臨むことができるようになりました。

現在も、住宅の設計施工を主体に、時々、ビルや公共建築の設計監理を続けています。個人住 宅については、ご紹介やネット、雑誌の反響などから、年に数件の設計依頼があり、施工も担当 していることから、何かと忙しく立ち働いています。
住宅は、施主さんそれぞれの個性が異なることから、一作ごとに新鮮な試みや感動をいただい ています。
「可児さんに頼んでよかった」
そう言われる喜びを支えに、これからも建築設計の分野で、日々研鑽を続けていきたいと思っ
ています。

最後に、つたない文章に最後までお付き合い頂いた読者の皆様と、貴重な体験をさせてくれた 妻の佳子に深く感謝する次第です。

ありがとうございました。

平成二十七年十一月二十二日

東京都渋谷区笹塚の自邸にて
一級建築士 可児 義貴

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