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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2001/10/01(できるだけ毎週月曜日発行)
第1章 土地を選ぶ
2.借りていることの強み(1)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
ご好評につき、毎週月曜日発行とさせていただきます。
遅れたら、ごめんなさい。
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■ 2.借りていることの強み(1)
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長い長い冬も、やがていつか春になることになっている。
隣の医者が立ち退く期限が一年後に迫ったある日、今まで見たこともないよ
うな形相で妻が取り乱して叫んだ!
「もう、ガマンの限界!」
聞けば、隣の医者から、診療室の窓先を通るとき「あいさつして通れ」と言わ
れたらしい。
前にも書いたが、私の買った家は、1階20坪、2階20坪のほとんどサイコロ
のような古家を真半分に仕切って、1階10坪、2階10坪を耳鼻咽喉科の診療所
に貸してあった。互いに前面道路に面して玄関、そして真裏にそれぞれの勝手
口がある。
が、その勝手口へ至る通路が、貸してある診療所側にあったのだ。勝手口から
道路へ出るには、どうしても1階の診療室になっている窓先を通らなければな
らない。
隣は、医者ということもあり、昼時は、薬メーカーの営業マンが、ほんの
2メ-トル先の隣の勝手口へ、我が物顔で出入りする。勝手口の前が洗濯物干
し場だった我が家は、干し方にまで神経を使った。
ゴミ出しにしても、生ゴミ以外は勝手口を使わず、部屋を横断して玄関から
出すなど遠慮していた。
口数の少ないお袋までも、「今まで言わなかったけど・・」と、堰を切ったよ
うに訴える。たまに通路を通ると、窓を開けて睨まれることがたびたびあった
らしい。
契約書は、確かに「貸家」となっている。「家」は貸したが、「土地」まで
貸した覚えはない。
もともと嫁姑の関係というのは古今東西強烈だが、逆に、その一致団結したす
さまじい意思に背中を押され、抗議に出向いた。
声を荒げ、抗議している間、ふと思った。
「これ以上強く言って、あの裁判の和解案に影響しないだろうか・・」と弱気
が走る。2年の裁判を経て、立ち退きまでの5年の猶予期間まで、あと1年、
長かった・・。
そう思うと、自然と「抗議」が「お願い」口調になる。ああ、あの一致団結し
た嫁姑は、こんな私を見たら、どんなにか嘆くだろう。
それにしても、どうして貸している我々がこんなにも弱腰にならねばならな
いのか。
この事件以来、一日のほとんどを家で過ごす妻は、隣と顔を合わせないよう
神経を使っているようだった。
そして、ついに「お願い、あと1年でも、どこか別な所に住みたい」と憔悴し
た顔で言った。
その言葉に、駅前不動産に頼んで賃貸物件を見て廻る。「借りよう、借りるの
は強い。」私は呪文のように唱えていた。
(つづく)
