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建築家の自邸、満足と反省の物語

借りていることの強み(2)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」

  2001/10/08(できるだけ毎週月曜日発行)

  第1章 土地を選ぶ

   2.借りていることの強み(2)

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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 2.借りていることの強み(2)


 日中、自転車で賃貸物件を見て廻り、夜、暇をみては新しい家の設計を考え
る、そんな日々が続いたある日のこと、二人の子供との楽しい入浴タイムを打
ち破る「ちょっとあなた!」と、うわずった妻の声がした。
これに対し私は「後にしてくれ。」つれない返答だったそうな。

ここ数年のストレスが溜まり、美しかったはずの妻の美貌は確実に色あせてい
た。が、まさしくこの時こそは見放されていた運の女神の使者のようであった。
さて、その真相とはー

 読者の方の中にも、新聞紙上で、不動産の競売情報が大きく掲載されている
のを見かけられたことがあると思う。
聞くところによると、バブル崩壊の後、不良債権処理の場として、皮肉なこと
に、この競売業界は今がバブルなのだそうだ。
また、ひところよりは我々素人にも参加しやすい法改正がなされていると聞く。

 風呂から上がった私に、待ちきれないとばかりに妻が駆け寄る。
「この近くに競売物件があるわよ!借地だけど。」
「なに、借地?」
『借りる』ことに関心が高かった私は、その新聞記事に飛びついた。
『最低売却価格』と書いてあるが、金額も信じられないぐらい安い!
「よし、明日、見に行こう!」
 その夜は、なかなか寝付けなかった。

 競売物件は、所轄の裁判所にて物件の詳細資料を閲覧できるようになってい
る。詳しい住所等は詳細資料でないとわからない。
 閲覧開始日に裁判所を訪れてみると、閲覧室には人があふれていた。
 ファイルは1冊しかないため、目的の物件を他の人が見ていると、返ってく
るまで待たなければならない。人気の物件は、そのファィルさえなかなか見れ
ないらしい。

 しばらく待って、やっと私は目的の物件のファイルを見た。住所や、ポイン
トと思われるところをメモにとった。
 競売は、情報が新聞等に掲載されて入札まで、約1ケ月たらずしかない。
私は裁判所からの帰路、まっすぐ現地へ向かった。現地には電話で連絡してお
いた妻がたっていた。東京ではめずらしく積雪の残る寒い日だった。

 見るとアパート併用住宅が建っていた。現在の古家の敷地の3倍以上の広い
面積。しかも、静かで駅に近い。
「良さそうじゃない。」妻が、いや神がささやいた。

借地の場合、一般に所有権の土地の相場価格の六割か七割で売買される。
土地は地主のものだが、そこに立つ建物が登記され、権利が守られる。毎月数
万円の地代を地主に支払うことになるが、土地にかかる固定資産税などは地主
の負担となる。

 旧法の借地権の場合、一応20年の期限付きだが、更新料を支払うことで契約
は更新される。
建物を建て替える時や売買の際は、地主の承諾と一時金が必要で、こうした時
その承諾等を巡ってトラブルが発生するらしい。

 以前は、地主の主張は絶対だったらしいが、法改正により、承諾が得られな
い場合、裁判所が地主に代わって承諾をすることもあるという。そういったこ
とが面倒で敬遠されているのも頷ける。 従って、借地権を購入する場合は 地
主の実情や評判も重要な判断材料となるそうだ。

 しかし、それを超えれば同じ金額で所有権の二倍近い広さが確保できる。借
りることの強さを身に沁みて体験した私達は躊躇することはなかった。
ちなみに私達が目に止めた借地権の地主は、聞くところこの地域一体の大地主
で、名士だという。文句は無い。


(つづく)

 
 
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