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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/1/29(毎週火曜日発行)
第1章 土地を選ぶ
5.うまい土地の選び方(2)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 5.うまい土地の選び方(2)
どこにA社はあるのだろう。
A社とは、売主つまり地主から信頼を受けて直接に売却を任される不動産業
者ということになる。もし仮に、私が何かの都合で自宅を売ろうとしたらどう
するだろうか。まず、駅前あたりに店舗を構える大手不動産会社に相談に行く
可能性は大きい。大手には他の地域に支店があったりして、広域の情報が得ら
れるメリットがある。購入サイドとしては、そうしたところの顧客リストに名
前を残しておくことも有効な手段のひとつだ。
また、住みたいエリアを限定した中で、古くから地主の駐車場やアパ-トを
管理しているような不動産業者に相談するのも悪くはない。こういう不動産業
者は、管理を通して地主と長い間の信頼関係が築かれている場合が多い。売却
の際には一番に相談を受ける立場であろう。数値的には少ないと思われるが、
声を掛けておくことにこしたことはない。私の知る限り、こういう地元密着型
の不動産業者は、物件のみならず周辺の情報にも詳しく、売買の後も何かと気
にかけてくれる良心的なところが多い。少なくても、これらの業者からは家に
いられなくなるほどしつこく営業される心配は無いだろう。
それから以外と知られていないが、銀行には必ず系列の不動産会社がある。
債権処理などで売りにでるような物件は、系列の不動産会社に最初に情報が行
くわけだ。住宅ローンにはどこの金融機関も熱心だから、相談かたわら銀行の
担当者にそういう不動産会社を紹介してもらうのもよい方法だ。特に信託銀行
系は業務上、不動産の情報も比較的多いようだ。
求めよ、さらば与えられん。
さて、こうした努力を一定期間続けていると、確かに売り物件の情報が何件
か入ってくるようになる。ここで「しめた!」と思ったら大間違い。今度は、
この情報の良し悪しを判断しなくてはならない。以前にも、相場感が養われて
いないと決断できないと書いたが、たいてい探し始めは、紹介された物件の良
し悪しがわからない。当然と言ってしまえばそれまでだが、ここからが大事な
ポイントである。
情報がきたら、勉強と思って現地に出かけ、自分なりに良し悪しを判断して
みることだ。他の不動産業者に相場をきいてみるのも有力な判断材料になる。
ただし、物件の情報は業者にとって商品そのものでもあるので、やたらと資料
を他に見せたりするのはルール違反である。場合によっては、それで売買に影
響をおよぼすこともあるので注意を要する。はっきり場所を特定しないまでも、
この辺りという聞き方で充分だ。
ただ、このころは営業色の強いD社あたりから、これでもか、これでもかと
「物件案内」の営業をされていて、何を信じてよいか訳がわからなくなってい
る頃かもしれない。こうした場合、きっと顧客リストの上部に自分の名前が書
き込まれ、「有力見込み客」として来月の契約予定者に内定していたりする。
ここには、物件の良し悪しに関わらず、いかに契約の本数を伸ばすかの戦いが
日夜繰り広げられる別世界が存在する。笑い事でもなく、現実にこの世界に引
きずり込まれて撃沈される人達は、私の知る限りにおいても意外と多い。
いくつか物件を見に行くと、やみくもに紹介して契約を迫る業者と、それな
りに「選んで」紹介してくれる業者がわかるようになる。相性だってあるだろ
う。ちょっと強引と思われる業者には、はっきり断る勇気をもってほしい。
そして、最も重要なのは、ある程度信頼のおけそうな業者から紹介された物
件については、わからなければわからないなりにも「返事をする」ことである。
紹介された物件を見にも行かないとか、返事もしないとなれば論外。まず、顧
客リストの最後尾へ回されてしまう。次から情報をくれなくなることもある。
当たり前のことのようだが、不動産に限っていえば、この「返事もしない」
客はとても多い。業者によっては、「飛び込み」客はほとんど相手にしないと
ころもある。「返事がない」確率が高いから顧客リストでは最後尾だ。よさそ
な業者には情報を待つのみならず、時折こちらからお伺いをたてるのもよい。
業者とて人間、熱心な客には『ひと肌脱ごう』という気になるものだ。
例え話だが―
「限られた予算で、本当においしいマグロの刺身を食べたい。」
私だったらどうするか。
まず、なんとなく小奇麗な魚屋(不動産屋)を探す。最初は冷凍のショーケー
スにあるパック入りの切り身なんぞを指差して「これ、おいしそうなトロです
ね。」なんて言う。勿論魚屋の親父は「それは解凍だよ」とか「本マグロじゃ
ないよ」などとは言わない。だからといって責めてはいけない。しばらくは、
いいお得意さんになってみる。
そのうち同じ魚屋で「本マグロ」と書かれた値札を見つけたら「やっぱり本
マグロは旨いですよね」と言ってみる。親父は「あたりまえよ」と答えるだろ
うが「けど、解凍だよ」とは言わない。ある日、この魚屋に冷凍ものでない生
の本マグロの切り身がほんの少し並んだとする。「今夜の酒のツマミは何にし
ようか」などと考えながら夕方に魚屋の前を通っても、もう生の本マグロは消
えている。安くて旨い鮨屋と評判の兄ちゃんが見逃す訳がない。午前中にちゃ
んとゲットしているのだ。(良い土地だって同じこと)
私はついに意を決してあの魚屋に行くことにする。勿論仕事の合間ではない。
仕事を休んでである。頃は昼下がり。客足が少ない時間を狙って、親父に声を
掛ける。「予算はこれだけ。親父さんの力で本当に旨いマグロを食べさせてく
ださい。」親父がニヤリと不気味に笑ったらこっちのもの。
予算はしっかり伝えてある。仕入れても売れ残る心配も無い。親父はきっと
安心して築地市場で近海ものの生の本マグロを探してくれるだろう。(不動産
の場合、この親父さんには仕入れ先から3%、この私から3%の計6%の仲介
手数料が手元に残る。旨い話である。)
(つづく)
