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いい素材を吟味して使う

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無垢の木は、それだけで存在感があり経年変化も楽しめる。しかし、使用する箇所や材の厚さによっては変形して不具合を生じることも多い。それをカバーするのが「練り付」と呼ばれる木工技術。スライスした銘木(美しい希少な材)を貼った単板は、家具や建具などに多用されている。

この分野で、二十年前からお付き合いのある今西社長さんに久しぶりにお会いした。普段はネットやFAXで工場とやり取りしているので、なかなか会う機会がなかったが、先日、木場にある単板の問屋を紹介していただいた。気に入ったものを大量に購入するためである。買ってどうする? ストックしておいて、ちびちび使う。

巨大な倉庫で、直輸入の銘木単板の束を時間をかけて吟味する。樹種は「イタリアン・ノーチェ」と呼ばれる欧州産のウォールナット(くるみの木)。一般的なブラックウォールナットに比べ、色調が明るく木目が美しい。高価で貴重な材料なので、一枚づつ慎重に選ばねばならない。寿司職人が本マグロの目利きをするのと同じだ。

「ホテルのような家づくり」を合言葉にしている。そのためには、銘木に光が当たった時の美しさを忘れるわけにはいかない。設計士がそこまでする?

その昔、私が信奉した建築家の白井晟一氏は、材木の選別に木曽福島の山奥まで足を運び、巨匠の村野藤吾氏は恵那の崖の上の巨大な岩を指差して「あれが良い」と無茶を言ったという。ここまでしないと、本当に納得のものはできないのだ。

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