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五台の防犯カメラに守られて暮らすことに

そんな矢先、偶然にも数軒先のマンションで、痴漢騒ぎがあった。駅前交番の警察官からも注意を促す伝言があった。発表していないだけで、この甲州街道沿いはその手の犯罪が多発しているらしい。
「おいおい、早く言えよ」とばかりに不安が増殖していった。
年頃の若い女性三人に、幼い子供たち。ポストの目の前にあるガレージには愛車ジャガーが控えている。
「買ってから既に十三年目のポンコツですよ」
と貼り紙をしておくわけにもいかない。この新しく格好イイ家に外車とくれば、どう見ても多少はリッチな雰囲気が漂って、いつの間にか犯罪の舞台は整っているのだった。
「もしかしたら今日あたり覆面の男たちが・・・」
そう思うと余計に眠れなくなった。

翌日、早速、秋葉原の電気街に飛び込む。ダミーの防犯カメラを買うためだった。本物は、録画デッキも必要で、数十万円もコストがかかる。悩んだ結果、数千円のダミーカメラを三台買ってポストからよく見える位置に取り付けたのだが、不安は消えなかった。賊は騙せても自分は騙せない。
それから数ヵ月後、止む無く警備保障会社と契約することになり、実に我が家には、本物と偽物合わせて五台のカメラが賊と対峙することになった。ダミーのカメラを取り外すとキズ跡が残るからそのままにしているのだが、歳のせいか最近ではどれが本物のカメラか分からなくなってきた。

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